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「同質」の中に人を閉じこめない – 目の前の人の可能性を見て、生き続ける意味を持ち続けられる場所をつくる

76藤岡 聡子さん長野県

配信日

藤岡 聡子診療所と大きな台所があるところ ほっちのロッヂ 共同代表株式会社ReDo 代表取締役

福祉環境設計士

1985年生まれ徳島県生まれ三重県育ち。長野県軽井沢町在住。夜間定時制高校出身。
人材教育会社を経て2010年、24才で介護ベンチャー創業メンバーとして有料老人ホーム創業。「なんで老人ホームには老人しかいないの?」を元に、アーティスト、大学生や子どもたちとともに町に開いた居場所づくりを試みる。
2015年デンマークに留学、幼児教育・高齢者住宅の視察、民主主義形成について国会議員らと意見交換を重ね帰国。
その後東京都豊島区の元空き家をリノベーションしたゲストハウス1階にて「長崎二丁目家庭科室」を主宰、老若男女1000人以上が訪れた。2019年、家族とともに移り住んだ長野県軽井沢町にて「症状や状態、年齢じゃなくて 好きなことする仲間として出会おう」をコンセプトに「診療所と大きな台所があるところ ほっちのロッヂ」を立ち上げ、医師と共に共同代表に。表彰歴に2019年ロハスデザイン「コト」大賞、第10 回アジア太平洋地域・高齢者ケアイノベーションアワード2022 Social Engagement program 部門で日本初のグランプリ受賞、グッドデザイン賞2022を受賞。
共著に『ケアとまちづくり、ときどきアート(2020中外医学社)』『社会的処方(2019学芸出版社)』

2022年度グッドデザイン賞スペシャルとして、「診療所と大きな台所があるところ ほっちのロッヂ」プロデューサーの藤岡聡子さんにお話を聞いた。ほっちのロッヂは、人の課題や弱さではなく、「好きなことをする仲間として出会う」ことで人の可能性を引き出す場所。長野県北佐久郡軽井沢町の「発地(ほっち)」と呼ばれる地区にある、診療所、デイサービス、病児保育を中心にした在宅医療拠点だが、医療や介護だけを提供する場所ではない。いろいろな世代の人が、自主的に好きなことしに来たり、時間をすごしたりする場所だ。院長が畑仕事をし、映画を見る会が開かれ、町の人が子供向けのアート講座を開いたりしている。建築も森の中の山小屋のよう。リノリウムの床がどこまでもフラットに続いている一般的な医療施設とは全然違う、みんなで集える場所もあれば人の気配を感じながらも一人になれるちょっとした居場所やほっとするスペースがある。訪問医療のサービスの傍ら、スタッフが訪問する地域のコミュニティ活動に参加している場合もあれば、ほっちのロッヂに通ってくる子が介護訪問についていくこともあるという。 介護、医療などその目的のためだけではなく、訪れる人それぞれが楽しみを見つけ、生き続ける意味を持ち続けることをサポートする、コンヴィヴィアルな日常生活の延長の場。そして、子供たちにも残していきたいと思える、一人一人とって心地よい場所がつくられている。藤岡さんは、病気や体の不調といった「課題」にフォーカスしすぎると、その人の持つ可能性が見えなくなるという。地域やコミュニティの課題解決を「仕事」として担う場合にも当てはまることだろう。 藤岡さんは、20代で創業に参加した有料老人ホーム、デンマーク留学を経てお子さんを育てながら開設した「長崎二丁目家庭科室」、そして今回の「ほっちのロッヂ」と、ご自身も心地よくいられる場所に、その場所にいる一人一人が生き生きできる場を一貫して作り上げてきた。その根元にある社会への違和感を持つに至ったご自身の体験や、新しい環境や人にどうやって混ざり合っていくのかなど、トークを通じてたくさんのことが学べる90分だ。